1. はじめに|深夜酒類提供飲食店営業届とは?
飲食店を経営するうえで、深夜0時以降に酒類を提供する場合、通常の営業許可だけでは不十分です。
法律で定められた「深夜酒類提供飲食店営業届」(以下、深夜営業届)を提出する必要があります。
「深夜営業って、バーや居酒屋なら当たり前じゃないの?」と思うかもしれませんが、この届出が必要な業態と不要な業態があるため、知らずに営業すると法令違反になってしまうことも。
深夜酒類提供飲食店とは?
深夜営業届の対象となるのは、「午前0時以降も酒類を提供する飲食店」です。
ただし、風営法に基づき、以下のようなルールがあります。
- 料理をメインに提供する店舗は届出不要(例:24時間営業のレストランやラーメン店)
- 酒類をメインに提供する店舗は届出が必要(例:バー、スナック、カラオケバーなど)
つまり、同じ「深夜に営業している飲食店」でも、提供するメニューや営業形態によって届出の有無が変わるのです。
深夜営業届を出さないとどうなる?
もし、届出をせずに深夜0時以降も酒類を提供すると、風営法違反となり罰則の対象になる可能性があります。
具体的には、警察による指導・営業停止命令・罰金などのリスクがあり、最悪の場合、営業許可の取り消しに発展することも。
「知らなかった」では済まされないので、開業前にきちんと確認し、必要なら届出を提出しておきましょう。
☑ 次のセクションでは、具体的に「どんな飲食店が届出が必要か?」を解説します。
2. 届出が必要なケースと不要なケース
深夜にお酒を提供する飲食店なら、すべて「深夜酒類提供飲食店営業届」を提出しなければならないのか?
実は、店舗の業態や提供するサービス内容によって届出の必要・不要が変わります。
ここでは、届出が必要なケースと不要なケースを具体的に解説します。
届出が必要な飲食店の条件
以下のいずれかに該当する場合、深夜営業届の提出が義務付けられています。
✅ 午前0時以降に酒類を提供する飲食店
- バー、スナック、カラオケバーなど、食事よりも酒類の提供がメインの店舗。
- 小料理屋やラウンジなど、酒類を主としたサービスを提供する店舗も対象。
✅ クラブ・ダイニングバーのような業態
- お酒をメインに提供し、BGMやDJプレイがある店舗。
- 店内でダンスが行われる場合、別途「風俗営業許可」が必要になることも。
✅ カラオケがメインのバー
- カラオケ設備があり、酒類を提供する場合も届出が必要。
- ただし、フードの提供が主体であれば不要になるケースも。
届出が不要な飲食店の条件
以下のケースでは、深夜営業届を提出しなくても営業可能です。
❌ フードがメインの深夜営業店舗
- 24時間営業のレストラン、ラーメン店、牛丼チェーンなど、酒類の提供はあるが、あくまで食事がメインの店舗。
❌ カフェ・喫茶店の深夜営業
- 深夜0時以降も営業するカフェで、コーヒーや軽食を提供する店舗(※アルコール提供が少量であれば不要)。
❌ 風俗営業許可を取得している店舗
- 「キャバクラ」「ホストクラブ」などは、すでに風営法の許可を取得しており、別途深夜営業届を出す必要はない。
📌 届出が必要かどうかを判断するポイント
届出が必要かどうかは、以下の3つのポイントで判断すると分かりやすいです。
1️⃣ 午前0時以降に営業しているか?
→ していなければ届出不要
2️⃣ 酒類の提供が「主」か「従」か?
→ 酒がメインなら届出必要、食事がメインなら不要
3️⃣ ダンスやエンタメ要素があるか?
→ クラブのような要素がある場合、風営法の許可が必要なことも
あなたの店舗は届出が必要?
✅ 酒がメインのバーやスナック → 必要
✅ クラブやカラオケバー → 必要
✅ 食事が主体のレストランやカフェ → 不要
✅ 風営法の許可を取得している店舗 → 不要
「自分の店は届出が必要なのか?」と迷ったら、酒類の提供が主かどうかを基準に判断するのがポイントです。
次のセクションでは、具体的な申請方法や必要書類について解説します。
3. 深夜酒類提供飲食店営業届の申請方法
深夜0時以降に酒類を提供する場合、営業開始の10日前までに「深夜酒類提供飲食店営業届」を提出する必要があります。
申請の流れを事前に把握し、スムーズに手続きを進めましょう。
申請の流れ|深夜営業届を出す手順
1️⃣ 店舗の営業内容を確認
- 「深夜酒類提供飲食店営業届」が必要な業態かどうかをチェック
- 店舗の営業時間、提供するメニューを整理
2️⃣ 必要書類を準備
- 申請に必要な書類を揃える(次のセクションで詳しく解説)
3️⃣ 管轄の警察署へ提出
- 店舗所在地を管轄する警察署の生活安全課へ申請
- 直接訪問し、窓口で申請手続きを行う
4️⃣ 警察の審査を受ける
- 申請後、警察が店舗の図面や営業内容を確認
- 審査の結果、問題がなければ受理
5️⃣ 営業開始
- 届出が受理された日から営業可能
- 追加で指示があれば対応
📌 申請に必要な書類一覧
深夜営業届の提出には、以下の書類が必要です。
✅ 深夜酒類提供飲食店営業届出書(警察署で入手可能)
✅ 営業の方法を記載した書類(提供する酒類・営業時間などの詳細)
✅ 店舗の図面(平面図・求積図・音響設備の配置図)
✅ 周辺の概略図(店舗周辺の地図)
✅ 賃貸契約書のコピー(賃貸物件の場合)
✅ 住民票(営業者本人のもの)
※地域によって追加書類が必要な場合もあるため、事前に管轄の警察署に確認することを推奨します。
📌 申請の注意点|よくあるミスを防ぐために
✔ 申請は営業開始の10日前までに行う
→ 申請が遅れると、予定通りに営業を開始できなくなる可能性あり。
✔ 店舗の図面は詳細に作成する
→ 入口・客席・音響設備の位置など、正確な情報を記載すること。
✔ 周辺環境もチェック
→ 住宅が密集しているエリアでは、騒音問題が発生しやすいため注意。
4. 深夜営業のメリットとデメリット
深夜営業を行うことで、売上の拡大や新たな顧客層の獲得といった大きなメリットがあります。
しかし、その一方で、コストの増加や治安リスクなど、注意すべきポイントも。
ここでは、深夜営業のメリットとデメリットを整理し、成功するためのポイントを解説します。
深夜営業のメリット
✔ 売上アップ&客単価の向上
- 深夜帯はお酒を飲む客層が多く、1人あたりの注文単価が高くなる傾向がある。
- 競合が少なく、リピーターを獲得しやすい。
✔ 新たな顧客層を獲得できる
- 夜勤明けのビジネスパーソンや、終電を逃した人が利用する可能性。
- 深夜営業ならではの**“特別感”**を演出でき、SNS映えする店舗は拡散されやすい。
✔ 競争が少なく、集客しやすい
- 一般的な飲食店が閉まる時間帯のため、深夜営業に特化することで市場の独占が可能。
- 他店との差別化がしやすい。
✔ バーやカフェとの相乗効果
- 昼はカフェ、夜はバーといった二毛作営業を取り入れ、効率的な売上確保が可能。
深夜営業のデメリット
❌ 人件費・光熱費の増加
- 深夜帯のスタッフ確保が難しく、**深夜手当(通常の1.25倍)**が発生。
- 光熱費も増加し、コスト管理が必要。
❌ 治安リスクの上昇
- 酔客によるトラブル(クレーム、喧嘩、支払いトラブル)に注意が必要。
- 警察との連携を考慮し、防犯対策を強化する必要がある。
❌ 近隣住民とのトラブルリスク
- 深夜の騒音問題で近隣住民とのトラブルが発生しやすい。
- 防音対策、スタッフ教育、クレーム対応マニュアルの作成が重要。
❌ アルコール提供に関する法規制
- 酩酊客への過剰提供は違法行為となる場合があり、スタッフの適切な判断が求められる。
- 深夜営業に伴う規制や税制の変更にも注意が必要。
📌 深夜営業を成功させるためのポイント
✔ ターゲットを明確にする
- 「ビジネスパーソン向け」「観光客向け」など、深夜に来店する客層を明確化。
- そのターゲットに合わせたメニュー・価格設定を行う。
✔ トラブル対策を強化
- 防犯カメラや警備サービスの導入、スタッフの教育を徹底。
- クレーム対応マニュアルを作成し、トラブルを未然に防ぐ。
✔ コスト管理を徹底する
- 深夜営業は利益率が高くなりがちだが、人件費や光熱費の増加に注意。
- スタッフの配置を最適化し、無駄なコストを抑える。
✔ SNSマーケティングを活用する
- 深夜営業ならではの「特別な体験」を発信し、ターゲット層にリーチする。
- Instagram・TikTokを活用し、認知度を向上。
メリット・デメリットを理解して成功する
✅ 深夜営業は売上向上のチャンス!
✅ コスト増や治安リスクを抑える工夫が必要
✅ マーケティング・トラブル対策を徹底することで成功につながる
次のセクションでは、届出が受理された後の営業ルールや注意点について解説します。
5. 申請後の流れと営業の注意点
深夜酒類提供飲食店営業届を無事提出し、受理されたからといって、すぐに安心とは限りません。
営業開始後も法令を遵守し、トラブルを防ぐための対策をしっかり行うことが重要です。
ここでは、申請後の具体的な流れと営業時に気をつけるべきポイントを解説します。
届出が受理された後の流れ
1️⃣ 警察署から受理通知を受け取る
- 申請が通ると、管轄の警察署から「届出受理通知書」が発行される。
- これを保管し、必要に応じて提示できるようにしておく。
2️⃣ 営業開始(営業許可の取得後)
- 申請後、特別な審査期間はなく、届出が受理された日から営業可能。
- ただし、管轄の警察や地域の条例によって追加の指導がある場合もあるため注意。
3️⃣ 定期的な警察の立ち入り調査
- 深夜営業店舗は、不定期に警察の立ち入り検査が入ることがある。
- 書類の管理、店舗の設備、営業内容が届出通りかチェックされるため、常に適切な運営を心がける。
4️⃣ 近隣住民への配慮とトラブル対策
- 騒音問題や客層によるクレームが発生しやすいため、地域との関係を良好に保つ努力が必要。
- トラブルが発生した際の対応マニュアルを作成しておくと安心。
深夜営業における注意点
① 騒音・トラブル対策
- 店内の音楽や会話の音量を管理する(特にテラス席や屋外スペースがある場合)。
- 酔客による近隣トラブルを防ぐため、入店時・退店時のルールを設ける。
- クレームがあれば迅速に対応し、地域との関係を悪化させないよう努める。
② 法令遵守と営業ルールの確認
- 営業内容を変更する場合(営業時間延長・業態変更など)は、再度届出が必要。
- 風営法に抵触するようなサービスを提供しない(例:接待行為が発生する場合は「風俗営業許可」が必要)。
- アルコールの提供は適切な範囲で行い、未成年への販売・飲酒を厳しく管理する。
③ 深夜勤務スタッフの確保と教育
- 深夜帯の人材確保は難しいため、スタッフの労務管理が重要。
- 深夜手当やシフト管理を適切に行い、働きやすい環境を整える。
- トラブル対応の研修を実施し、スタッフが適切に対応できるようにする。
④ 防犯対策を強化する
- 防犯カメラの設置や、必要に応じて警備会社との契約を検討する。
- 万が一のトラブルに備えて、スタッフの安全確保を最優先に考える。
- 怪しい客やトラブルが発生した場合、速やかに警察と連携できる体制を整える。
法令を守り、健全な深夜営業を行うために
✅ 届出受理後も警察の立ち入り調査があるため、法令遵守が必須
✅ 騒音・酔客トラブルを防ぐためのルールを整備する
✅ 深夜勤務スタッフの確保・教育を徹底し、安全な営業環境を作る
✅ 地域住民との関係を大切にし、クレーム対応をスムーズに行う
深夜営業は大きなビジネスチャンスですが、適切な管理と法令遵守が求められます。
トラブルを未然に防ぎ、安心して経営を続けられるよう、しっかり準備を整えていきましょう!
6. まとめ|スムーズに届出を済ませ、深夜営業を成功させよう
深夜酒類提供飲食店営業届を提出することで、合法的に深夜0時以降の酒類提供が可能になります。
しかし、届出をしただけでは安心できません。営業を続けるためには、法令を遵守し、適切な店舗運営を行うことが不可欠です。
ここでは、本記事のポイントを簡潔に振り返り、スムーズな届出と安全な深夜営業のために意識すべきポイントを整理します。
📌 深夜酒類提供飲食店営業届のポイントまとめ
✅ 届出が必要な業態か確認する
- バー・スナック・カラオケバー・クラブなど、酒類提供がメインなら届出が必要。
- レストランやカフェなど、フード提供が主の店舗は届出不要。
✅ 営業開始の10日前までに管轄の警察署へ申請する
- 遅れると営業開始日に間に合わないため、早めの準備が重要。
- 必要書類の不備がないよう、事前にチェックリストを活用する。
✅ 警察の立ち入り調査があることを理解しておく
- 営業開始後も、警察の指導や定期的な確認が入る可能性がある。
- 許可を受けた内容と異なる運営をしないよう注意。
✅ 深夜営業のリスク対策を万全にする
- 近隣トラブルを防ぐためのルールを整備する(騒音対策、客の管理など)。
- 防犯対策を強化し、スタッフ教育を徹底する(防犯カメラの設置、トラブル対応マニュアル作成など)。
✅ 店舗運営に必要な法令を把握し、遵守する
- 未成年への酒類提供は厳禁。
- 風営法に抵触しないよう、接待行為を伴う営業をしない(ホステス・ホストを置く場合は「風俗営業許可」が必要)。
📌 チェックリスト|深夜営業を始める前に確認しよう!
✔ 深夜酒類提供飲食店営業届が必要な業態か確認したか?
✔ 営業開始の10日前までに警察署へ届出を提出したか?
✔ 申請に必要な書類を全て揃えたか?(営業届・図面・住民票など)
✔ スタッフに深夜営業のルールを共有し、適切な教育を行ったか?
✔ 防犯対策を強化し、トラブル発生時の対応を決めているか?
✔ 地域住民との関係を考慮し、クレーム対応の体制を整えたか?
深夜営業の成功は準備がすべて!
深夜営業は、正しく届出を行い、リスクを理解した上で対策を講じることで、安定した運営が可能になります。
違法営業は厳しく取り締まられるため、法令をしっかり遵守することが最も重要です。
また、騒音や治安悪化といったトラブルを未然に防ぐための工夫が、地域との共存にもつながります。
💡 「深夜営業を成功させるための準備」こそが、長く愛される店づくりの第一歩!
正しい手続きを踏んで、安心・安全な深夜営業をスタートさせましょう!