「グルテンフリーにできますか?」
「ナッツアレルギーがあるのですが、この料理は大丈夫?」
3月の観光シーズンを控え、インバウンド客が急増する中、現場のスタッフが最も恐怖を感じるのがこうした「食の制限」への対応ではないでしょうか。
単なる「いらっしゃいませ」や「お会計です」といった定型文だけでは、もはや日本の飲食店は立ち行かなくなっています。
特に欧米圏のお客様にとって、アレルギー対応やカスタマイズは「わがまま」ではありません。
それは健康や信条、そして自身のアイデンティティに関わる「権利」に近い感覚なのです。
「よくわからないから、とりあえず大丈夫と言っておこう」という曖昧な返答は、極めて危険です。
最悪の場合、アナフィラキシーショックなどの重大な事故を招き、お店の信頼を一夜にして失墜させかねません。
一方で、これらを完璧にこなすことができれば、そのお客様にとってあなたのお店は「日本で最も信頼できるレストラン」へと変わります。
本記事では、単なる接客フレーズの紹介に留まりません。
アレルギーの深刻度を正確に確認し、キッチンと密に連携し、自信を持って代替案(Alternative)を提示するための「プロ仕様のコミュニケーション術」を徹底解説します。
英語に自信がなくても大丈夫です。
命を守り、かつ売上を取りこぼさないための、現場で今すぐ使える最強の武器を手に取ってください。
1. なぜ「なんとなくの英語」では危険なのか?アレルギー対応の重要性
インバウンド接客において、アレルギー対応は単なるサービスの一環ではありません。
それは「リスクマネジメント」そのものであり、プロとしての倫理観が問われる場面です。
日本と海外の「認識のギャップ」を知る
日本と海外では、食物アレルギーに対する認識の強度が大きく異なる場合があります。
日本では「少し入っている程度なら大丈夫だろう」「味付けの一部だから無視できる」と考えがちですが、これは非常に危険な思い込みです。
例えば、重度のナッツアレルギーを持つ方にとっては、直接ナッツを食べていなくても、同じ調理器具やまな板を使っただけで命に関わる発作を起こすことがあります。
妥協が招く「信頼の崩壊」
また、ヴィーガンやベジタリアン、ハラールといった食の多様性も、単なる好き嫌いではありません。
それらは宗教的背景や深い倫理観に根ざしたものです。
「これくらいならバレないだろう」という小さな妥協は、お客様のアイデンティティを傷つけ、侮辱する行為になりかねません。
私たちが目指すべき「誠実なNO」と「創造的なYES」
プロのサービスマンとして私たちが目指すべきは、二つあります。
一つは、安易にNOと言わずに済む方法(代替案)を必死に探すこと。
そしてもう一つは、どうしても対応できない時に、明確な理由とともにNOと言える勇気を持つことです。
そのために必要なのが、正確な情報を引き出すための「質問の型」です。
曖昧な「Yes」でその場を凌ぐのは今日で終わりにしましょう。
お客様の安全を第一に考え、自信を持って対話できるスキルの習得が、あなたを一流の飲食人へと押し上げます。
2. 命に関わる!アレルギーの強度を特定する「3つの必須質問」
お客様が「I have an allergy.(アレルギーがあります)」と言ったとき、まずは深呼吸をして落ち着きましょう。
パニックになる必要はありません。
大切なのは、そのアレルギーがどの程度深刻なのか、そしてどこまでが許容範囲なのかを論理的に深掘りすることです。
以下の3つのステップに沿って、確実にヒアリングを行いましょう。
2-1. 【STEP 1】対象となる食材を具体的に特定する
まず、「何がダメなのか」を正確に把握します。
例えば「Nuts」という言葉は非常に広義です。
ピーナッツはダメだが、くるみやアーモンドは大丈夫というケースも多々あります。
- “Could you tell me exactly what you are allergic to?”(具体的に何のアレルギーをお持ちか教えていただけますか?)
- “Does that include sesame oil or soy sauce?”(それはごま油や醤油も含みますか?)
「Everything」と言われた場合は、特に注意が必要です。
その場合は「Could you list the most severe ones?(特に深刻なものをリストアップしていただけますか?)」と聞き返しましょう。
2-2. 【STEP 2】深刻度(重症度)を確認する
微量の混入(コンタミネーション)すら許されないのか、それとも直接その食材を食べなければ良いのかを確認します。
この切り分けが、キッチンへのオーダーの出し方を決定づけます。
- “Is it a severe allergy?”(それは深刻なアレルギーですか?)
- “Is a small amount okay, or should it be completely removed, including traces?”(少量は大丈夫ですか?それとも、微量も含めて完全に除去する必要がありますか?)
- “Do we need to use separate cooking utensils?”(調理器具を分ける必要がありますか?)
「Traces(微量、形跡)」という単語は、アレルギー対応において非常に重要です。
これがNGな場合は、工場での混入可能性がある既製品も使えないと判断すべきです。
2-3. 【STEP 3】出汁(だし)や調味料の許容範囲を確認する
日本の料理において、最も判断が難しいのが目に見えない「出汁」や「隠し味」です。
特にベジタリアンやビーガンの方にとって、魚の出汁(Dashi)の可否は、その料理が食べられるかどうかを分ける最大の境界線です。
- “Is fish stock (Dashi) okay for you?”(魚の出汁は大丈夫ですか?)
- “This dish contains a small amount of alcohol or mirin. Is that acceptable?”(この料理には少量のアルコールやみりんが含まれていますが、大丈夫ですか?)
「OK」と言われた場合でも、念のために「I will double-check with the chef.(シェフに再度確認してまいります)」と付け加えることで、お客様の安心感は倍増します。
3. グルテンフリー・ビーガン対応で「醤油の小麦」まで踏み込むプロの視点
インバウンド客の中で、今や「Standard」となりつつあるのが「Gluten-free(グルテンフリー)」と「Vegan(ビーガン)」です。
ここで多くの日本人スタッフが陥る「知識の罠」を回避しましょう。
醤油という「隠れた小麦」に気づけるか
和食のベースである「醤油」には、原料として小麦が使われています。
「小麦粉を使った料理(パンやパスタ)ではないから大丈夫」という安易な回答は、セリアック病などの重篤な小麦アレルギーを持つ方にとって致命的です。
- “Our soy sauce contains a small amount of wheat. Is that alright?”(当店の醤油には少量の小麦が含まれていますが、よろしいですか?)
- “We can offer Tamari soy sauce, which is gluten-free. Would you like that?”(グルテンフリーの「たまり醤油」をご用意できますが、いかがですか?)
「たまり醤油(Tamari)」という言葉を知っているだけで、海外のお客様からは「この店はプロだ」と一目置かれます。
ビーガン対応:動物性の境界線を理解する
ビーガンの方は、肉や魚を避けるだけでなく、卵、乳製品、さらには蜂蜜(Honey)や、精製過程で牛骨粉を使うことがある白砂糖を避ける方もいます。
また、和食において「鰹出汁」は動物性であることを忘れてはいけません。
- “This soup is made from fish stock. We can change it to seaweed stock (Konbu-dashi) if you prefer.”(このスープは魚の出汁を使っています。ご希望であれば、昆布出汁に変更可能です。)
- “Does your diet allow honey or white sugar?”(あなたの食事制限では、蜂蜜や白砂糖は許可されていますか?)
相手が求めている制限の「境界線」を、スタッフ側から提示することで、お客様は「ここなら安心して食事ができる」と確信します。
この信頼関係こそが、リピーターや高評価な口コミを生む源泉となります。
4. 「できません」で終わらせない!顧客満足度を爆上げする代替案(Alternative)提示術
キッチンの状況やメニューの構成上、どうしてもお客様の要望に100%応えられない場面は必ず出てきます。
しかし、そこで「No, we can’t.(できません)」とだけ伝えて背を向けるのは、サービスのプロとしては二流です。
欧米のカスタマーサービスにおいて、できないこと(NO)を伝える際は、必ず「できること(Alternative / 代替案)」をセットで提示するのが鉄則です。
4-1. 具材を抜く(Remove / Exclude)提案
最もシンプルな対応ですが、代わりの提案を添えることで「損をした気分」を払拭できます。
- “We can’t change the sauce, but we can serve the salad without cheese.”(ソースは変更できませんが、サラダのチーズを抜いて提供することは可能です。)
- “We can remove the shrimp from this dish. Instead, would you like more vegetables?”(この料理から海老を抜くことができます。代わりに野菜を増やしましょうか?)
4-2. 別のメニューを勧める(Suggest / Recommend)
特定の一皿をカスタマイズするよりも、元々制限をクリアしている別の料理を勧める方が、キッチンにとってもリスクが低く、お客様にとっても美味しい場合が多いです。
- “I’m afraid this dish cannot be made gluten-free because the sauce is pre-made. However, the Grilled Fish is naturally gluten-free. Would you like to try that?”(あいにくこの料理はソースを作り置きしているためグルテンフリーにできません。ただ、焼き魚は元々グルテンフリーですので、いかがでしょうか?)
4-3. ソースを別添えにする(Serve on the side)
「何が入っているか不安」というお客様に対して、最も有効なのがこの提案です。
- “We can serve the dressing on the side so you can check the ingredients or use as much as you like.”(材料を確認したり、お好きな量を使ったりできるよう、ドレッシングを別添えにすることも可能です。)
「何ができないか」ではなく「何ができるか」にフォーカスした会話は、お客様に「自分のために尽力してくれている」というポジティブな印象を与えます。
この「寄り添う姿勢」こそが、インバウンド対応における最強のホスピタリティなのです。
5. 現場の救世主!スタッフ用「指差し確認アレルギー表(英訳版)」の活用
言葉だけで複雑なアレルギー情報をやり取りするのは、聞き間違いや言い間違いのリスクが常に付きまといます。
特に忙しいピークタイムでは、焦りから確認漏れが起きやすくなります。
そこで導入を強くおすすめしたいのが、視覚的に確認できる「指差し確認シート(Communication Board)」です。
指差しシートがもたらす「3つのメリット」
- 正確性の向上: お客様自身が選ぶため、解釈の余地がなくなります。
- スピードアップ: 英語で説明する時間を短縮でき、スムーズなオーダーが可能です。
- 安心感の提供: 「この店はアレルギー対応の仕組みがある」という視覚的証明になります。
シートに記載すべき必須項目例
以下の表を参考に、自店のメニューに合わせたカスタムシートを作成してみてください。
| English (英語) | 日本語 |
| Allergy / Dietary Requirement | アレルギー・食事制限 |
| Eggs / Dairy products | 卵・乳製品 |
| Wheat (Gluten) | 小麦(グルテン) |
| Peanuts / Tree nuts | ピーナッツ・ナッツ類 |
| Fish / Shellfish | 魚・甲殻類 |
| Soy / Sesame | 大豆・ごま |
| Meat (Pork, Beef, Chicken) | 肉(豚、牛、鶏) |
| Alcohol | アルコール |
| Severity Level | 深刻度 |
| Life-threatening (Severe) | 命に関わる(深刻) |
| Traces are NOT okay | 微量でもNG |
| Small amounts are okay | 少量ならOK |
このようなシートを用意していること自体が、お店としての専門性と信頼性(E-E-A-T)をアピールする強力な武器になります。
6. 接客英語をさらに磨くために。飲食店スタッフにおすすめの英会話スクール
ここまで、現場ですぐに使えるテクニックをお伝えしてきました。
しかし、現場での「とっさの判断」や「細かなニュアンスの伝達」には、やはり基礎的な英語力と、実際のシチュエーションを想定したトレーニングが欠かせません。
アレルギー対応は、一度のミスが取り返しのつかない事態を招くからこそ、プロの指導を受けて「自信」をつけておくことには、計り知れない投資価値があります。
ここでは、多忙な飲食店スタッフやオーナー様が、効率的にレベルアップできる学習サービスを厳選してご紹介します。
飲食店スタッフに最適な学習サービス
1. 実践的なコミュニケーション力を養うなら
オンラインでいつでもどこでも学べる環境は、シフト制で忙しい飲食店スタッフに最適です。まずは無料体験から、自分の今の実力を試してみましょう。
2. 集中して短期間で「接客英語」をマスターしたいなら
特定のシチュエーション(オーダー、トラブル対応、アレルギー確認)に絞ったトレーニングが可能なスクールを選ぶことで、最短距離で現場復帰できます。
👉 ウィリーズ英語塾
3. スタッフ教育として導入を検討しているオーナー様へ
店舗全体のレベルアップを図るなら、法人プランや研修向けカリキュラムがあるサービスがおすすめです。全員が同じ基準で対応できるようになることが、最大のリスクヘッジになります。
4. 自分のペースで、まずは基礎から固めたい方に
「いきなり講師と話すのはハードルが高い」という方は、アプリや自習形式のサービスで語彙力を増やすことから始めましょう。
👉 レアジョブ英会話
安全という名の最高のサービスを
アレルギー対応は、時に面倒で、神経を使う作業かもしれません。
しかし、私たちが提供しているのは「ただの食事」ではなく、お客様が安心して過ごせる「時間と空間」です。
あなたが発する「Is it a severe allergy?」という一言は、お客様にとって「この人は自分のことを守ろうとしてくれている」という何よりのメッセージになります。
完璧な英語である必要はありません。
プロとしての知識を持ち、誠実に、そして毅然と対応すること。
その積み重ねが、あなたのお店を、そして日本の飲食業界全体を、世界から愛される場所へと変えていくのです。
さあ、今日から自信を持って、お客様の「食の安全」に向き合っていきましょう。
