SNSで爆発的に人気となり、世界中を席巻している「ドバイチョコレート」。そのサクサク食感と独特な風味で多くの人を魅了するこのスイーツは、一体どのようにして生まれ、なぜこれほどまでに話題になったのでしょうか?本記事では、ドバイチョコレートの起源から特徴、そして日本での入手方法まで、徹底的に解説します。

ドバイチョコレートとは?その起源と特徴

誕生秘話:妊娠中の食べたい欲求から生まれたスイーツ

ドバイチョコレートは、2021年にドバイで設立された「Fix Dessert Chocolatier」が生み出したチョコレート菓子です。創業者のサラ・ハムーダ氏(British-Egyptian)が妊娠中の食べたい欲求(pregnancy craving)に着想を得て開発しました。当初は「Can’t Get Knafeh of It(クナーフェがやめられない)」という商品名で販売されていました。

一部の情報によると、パートナーであるシェフのNouel Catis Omamalin氏が実際の製品開発を担当したとも言われています。マーケティング予算が限られていたため、SNSインフルエンサーによる口コミ宣伝に頼った戦略が功を奏し、2024年に入ってからその人気は爆発的に広がりました。

独特の食感と風味:サクサク×なめらか

ドバイチョコレートの最大の特徴は、その独特な食感と風味の組み合わせにあります。

主な材料は:

  • ミルクチョコレート(外側のシェル)
  • ピスタチオクリーム(フィリング)
  • カダイフ(細かく砕いた極細の麺状菓子)
  • タヒニペースト(ゴマペースト)

カダイフと呼ばれるトルコの伝統的な極細麺状の食材がサクサクとした食感を生み出し、ピスタチオクリームとタヒニの組み合わせが濃厚でありながら爽やかな風味を実現しています。この複雑な食感と味わいの組み合わせが、多くの人を虜にする要因となっています。

ドバイチョコレートがバズった理由

ドバイチョコレートが世界的に流行した理由はいくつか考えられます:

  1. 視覚的なインパクト:チョコレートを割った際の鮮やかな緑色のピスタチオフィリングと、繊維状のカダイフが織りなす断面は、SNS映えする見た目の良さがありました。
  2. ASMRとしての人気:ドバイチョコレートを割る「パキッ」という音と、食べる際の「サクサク」という食感は、ASMRコンテンツとしても大きな人気を集めました。
  3. 希少性と入手困難さ:当初はドバイの限られた場所でしか購入できず、その希少性が価値を高める結果となりました。
  4. インフルエンサー効果:2023年末から2024年にかけて、TikTokやInstagramのインフルエンサーたちが次々とドバイチョコレートのレビュー動画を投稿し、バイラル現象が起きました。
  5. 味と食感のユニークさ:伝統的な中東のデザート「クナーフェ」の風味をチョコレートバーという形態で楽しめる新しさが評価されました。

世界に広がるドバイチョコレートブーム

模倣品の急増とブランド戦争

ドバイチョコレートの人気が高まるにつれ、世界中でさまざまな模倣品や派生商品が登場しました。高級チョコレートブランドのLindt(リンツ)やGodiva(ゴディバ)も「ドバイスタイルチョコレート」として類似商品を発売し、市場に参入しています。

特にドイツでは、ドバイチョコレートの名称をめぐる法的問題も発生しました。ドバイ産ではないチョコレートに「Dubai Chocolate」の名称を使用することに対して、ドイツの輸入業者がLindt、Aldi、Lidlに対して中止命令を出した事例もあります。2025年1月にはケルンの裁判所が、トルコ製のチョコレートに「Dubai Chocolate」という名称を使用することは消費者を誤解させる可能性があるとして、Aldiに対して販売停止を命じる判決を下しました。

高額転売と品質問題

その人気から、オリジナルのFix社製ドバイチョコレートは高額転売の対象となり、本来68.25UAEディルハム(約2,700円)の商品が、転売市場では数倍から数十倍の価格で取引されることもあります。

また、急速な人気拡大に伴い品質問題も報告されています。ドイツのバーデン=ヴュルテンベルク消費者保護省が行った調査では、テスト対象となった8種類の「ドバイチョコレート」すべてに何らかの欠陥が見つかりました。5つの製品はココアバター以外の脂肪を含んでおり(ドイツでは「チョコレート」と表示するには純ココアバターを使用する必要がある)、5つの製品は製造過程での汚染により「消費に適さない」とされました。また、一部の製品には表示されていないゴマ(タヒニとして)が含まれており、カビ毒(アフラトキシン)の高い濃度も検出されました。

日本での人気と入手方法

日本上陸!各社から続々と発売

2025年に入り、日本でもドバイチョコレートの人気が高まっています。トルコの高級ブランド「divan(ディバン)」が「ピスタチオドバイチョコレート」を日本で販売開始し、バレンタインシーズンの15日間で1万5000枚が売れたと報告されています。価格は1枚税込2,916円で、送料を含めると4,000円以上となる高級品ですが、その人気は衰えることを知りません。

その他、リンツも「リンツ ドバイスタイルチョコレート タブレット」を日本で2万枚限定販売し、「1日で首都圏の店舗が売り切れる」ほどの人気となりました。

カルディコーヒーファームでは「ドバイスタイルチョコ(カダイフ入り)」が税込646円で販売されており、より手軽に楽しめるオプションとして人気を集めています。

ドバイチョコレートの価格帯

日本で購入できるドバイチョコレートの価格帯はブランドや商品により大きく異なります:

  • 高級輸入ブランド(divan、Fix正規品など):2,500円〜5,000円程度
  • 大手チョコレートメーカー(リンツなど):1,000円〜2,000円程度
  • 国内メーカーや韓国製など:500円〜1,000円程度

おすすめの購入場所

国内でドバイチョコレートを購入できる主な場所:

  1. 百貨店:松屋、伊勢丹などの輸入食品フロア
  2. カルディコーヒーファーム:比較的手頃な価格の商品が見つかる
  3. リンツ公式店舗・オンラインショップドバイスタイルチョコレート
  4. 輸入菓子専門店:PLAZAなど
  5. オンラインショッピングサイト:楽天市場、Yahoo!ショッピング、Amazon

ドバイのその他の有名チョコレートブランド

Al Nassma – ラクダミルクチョコレート

ドバイで語るべきもう一つの特徴的なチョコレートブランドが「Al Nassma(アル・ナスマ)」です。2008年に設立された世界初のラクダミルクチョコレートメーカーであり、その独特な風味と高級感で知られています。

Al Nassmaのチョコレートは、ラクダミルクならではの甘くて少し鋭い風味が特徴で、時には塩味を感じることもあると言われています。商品には70gのキャメルミルクチョコレートバーがあり、ホールミルク、ナッツ、70%カカオ(ダーク)、アラビア(アラビアンスパイスミックス入り)などのフレーバーが展開されています。

Mirzam Chocolate Makers – Bean to Bar

ドバイを拠点とする「Mirzam Chocolate Makers(ミルザム・チョコレート・メーカーズ)」は、カカオ豆からチョコレートを製造する「Bean to Bar」スタイルのクラフトチョコレートブランドです。歴史的なスパイスルートにインスピレーションを得た商品開発を行い、卓越したカカオと伝統的な製法、そしてエミラティ料理や文化からヒントを得たユニークなスパイスブレンドを組み合わせています。

シングルオリジンのチョコレートバーから、ハニカムを62%ダークチョコレートでコーティングした商品まで、幅広いラインナップが特徴です。

Patchi – レバノン発祥の高級チョコレート

「Patchi(パッチ)」は、実はレバノン発祥の高級チョコレートブランドですが、現在ではドバイを代表するチョコレートブランドとして認知されています。ドバイモールなどの商業施設に店舗を構え、エミレーツ航空の機内誌でも紹介されるなど、ドバイのお土産として定着しています。

100gあたり2,000円から3,000円ほどの価格設定で、高級感あふれる包装とプレゼンテーションが特徴的です。伝統的なアラブの風味と現代的なチョコレート製法を融合させた商品が人気を集めています。

自宅で作るドバイチョコレート

基本レシピ

市販のドバイチョコレートが高価だったり入手困難だったりする場合は、自宅で簡単に作ることもできます。基本的な材料は以下の通りです:

材料(2〜3人分)

作り方

  1. カダイフ(または皿うどん)をフライパンで軽く炒めて砕き、カリカリにする
  2. ココナッツオイルを混ぜ合わせ、冷ましておく
  3. ピスタチオペーストとタヒニペーストを混ぜ合わせる
  4. チョコレートを湯煎で溶かし、型の底面に薄く流し入れる
  5. 少し固まったら、その上にカダイフ、ピスタチオ&タヒニペーストを順に重ねる
  6. 最後にチョコレートで覆い、冷蔵庫で2時間以上冷やし固める

カダイフの代用品

本場のカダイフが手に入らない場合、日本で入手しやすい代用品としては:

  1. 皿うどん:サクサク食感が近い
  2. 春雨:事前に乾煎りするとサクサク感が出る
  3. そうめん:細く砕いて使用可能
  4. フィロ生地:薄く伸ばして細切りにする

まとめ:ドバイチョコレートの今後

ドバイチョコレートは、単なる一過性のトレンドを超えて、世界的な菓子文化の一部となりつつあります。チョコレート菓子の新たな可能性を切り開き、異文化間の食の融合を象徴する存在として注目されています。

今後も様々なバリエーションが登場し、さらなる進化を遂げる可能性があります。また、高級ブランドだけでなく、より手頃な価格帯の商品も増えることで、より多くの人がこの新しいチョコレート体験を楽しめるようになるでしょう。

世界中で人々を魅了し続ける「ドバイチョコレート」。そのサクサク食感とピスタチオの風味が織りなす特別な美味しさは、一度体験する価値があります。ぜひ、この世界的トレンドを自分の舌でも確かめてみてください。