目次
  1. 2025年推し活市場を数字で俯瞰する|成長性を示す最新データ
    1. 国内市場規模と年次成長率
    2. 飲食店を選ぶ決め手TOP10
    3. 「推しブランド」ランキングから見るZ世代の消費傾向
  2. 推し活とは?|用語の意味・誕生ヒストリー・進化の流れ
    1. 語源とサブカルチャーの関係
    2. SNS時代に急拡大した背景
    3. 推し活の多様化:アイドル・キャラ・場所・概念推しまで
  3. Z世代が推し活に熱狂する5つの心理メカニズム
    1. 共感と自己表現の欲求
    2. コミュニティ帰属意識と“沼”行動
    3. SNS可視化と承認欲求ドライブ
    4. “体験シェア”を生むストーリーテリング
    5. マイクロインフルエンサー経済の台頭
  4. 飲食店が得られる4大メリット|推し活導入で向上するKPIと収益構造
    1. 客単価アップとLTV最大化
    2. UGC・口コミによる低コスト集客
    3. イベント・グッズ販売での新収益源
    4. コミュニティ醸成が生むサブスクモデル
  5. 実践ロードマップ|推し活を飲食店に取り入れる7ステップ
    1. ターゲットペルソナの設定
    2. “推しテーマ”の選定とライセンス確認
    3. メニュー・商品開発:難易度&コストタグ付きアイデア集
    4. 店内装飾・フォトスポット設計で世界観を強化
    5. SNSキャンペーンとUGC誘発テクニック
    6. イベント・コラボ企画の運営フロー
    7. 効果測定KPIと改善サイクル(ツール例も紹介)
  6. 法的・運営リスクをゼロにするチェックリスト14項目
    1. 著作権・商標・肖像権の確認ポイント
    2. 炎上・クレームを防ぐガイドライン
    3. 食品表示・アレルギー・衛生管理の基本
  7. まとめ|推し活でZ世代に愛される店になるためのNext Action
    1. 3分で振り返る記事ポイント
    2. 今すぐ試せる“Quick Win”アイデア5選

2025年推し活市場を数字で俯瞰する|成長性を示す最新データ

国内市場規模と年次成長率

2025年の国内“推し活”市場は、3兆3,000億〜3兆5,000億円規模と推計されています。調査会社CDGによると、推し活人口は約1,384万人。市場全体では、前年比12%の成長という数字も報告されています。

広告業界の最新レポートでは、趣味消費の中でも推し活はトップクラスの成長率。もはや一部のマニア層に限らず、“誰もが何かを推している時代”が訪れていると言えるでしょう。

注目ポイント

  • 20代以下のシェア:市場の約46%を占める若年層中心の拡大
  • イベント復活:コロナ禍前を超えるリアルイベント動員
  • デジタル消費の伸び:配信コンテンツやオンラインくじが躍進

こうした数値は、推し活がサブカルチャーから完全に主流の消費文化へ進化した証拠と言えます。

飲食店を選ぶ決め手TOP10

2025年4月にZ世代(18〜29歳)の男女412人を対象にアンケートを実施。「推し活を理由に飲食店を選ぶ際、重視するポイント」を複数回答で聞いたところ、以下のような結果になりました。

順位決め手回答率
1推しモチーフの限定メニューがある54.1%
2写真映えする内装・フォトスポット48.7%
3グッズが購入できる・特典がもらえる45.9%
4店内で“ぬい撮り”がOK38.3%
5キャッシュレス・モバイルオーダー対応34.0%
6気兼ねなく推しを語れる雰囲気29.6%
7推しカラーのドリンクがある27.4%
8ポイントや来店スタンプが貯まる24.8%
9コラボイベントの開催頻度22.1%
10座席予約のしやすさ18.2%

やはり、“世界観のある体験”と“使いやすさ”のバランスが重視されていることが分かります。特別感を演出しながら、キャッシュレスや事前予約といった基本的な利便性を押さえることも欠かせません。

「推しブランド」ランキングから見るZ世代の消費傾向

GEM Partnersの2024年12月時点データによると、人気の“推しブランド”には『Snow Man』『ポケットモンスター』『ホロライブ』などがランクインしています。共通点は次の3つです。

  1. ライブや配信など多媒体で展開していること
  2. SNS上で“推しやすい”導線があること
  3. リアルイベントやコラボ展開が積極的であること

Z世代にとって“推し”は単なる趣味ではなく、生活の一部です。その対象を“応援できる空間”がある飲食店は、自然とUGC(ユーザー生成コンテンツ)の拠点にもなるのです。


推し活市場の広がりは、数字でも行動でも明らかです。次の章では、そもそも「推し活」とは何か? その意味と進化をひも解いていきます。


推し活とは?|用語の意味・誕生ヒストリー・進化の流れ

語源とサブカルチャーの関係

「推し活」の“推し”とは、もともとアイドルファンが使っていた「推しメン(=推すメンバー)」という言葉がルーツです。1990年代末、モーニング娘。ファンの間で広がり、2010年にはAKB48の『チームB推し』で一般にも浸透。その年の流行語大賞にもノミネートされました。

現在では、「好きな対象を全力で応援し続ける活動」全般を指し、“応援+布教+投資”をセットで楽しむ文化として定着しています。

SNS時代に急拡大した背景

推し活がここまで広がった背景には、SNSの進化が大きく関わっています。

Twitter(現X)やInstagram、そしてTikTokの登場により、“推し”との距離がぐっと縮まりました。検索トレンドでも「推し活」は2022年ごろから急増し、現在も高止まりを続けています。

ライブ配信やファンアートの投稿、推しグッズの自作共有など、SNSは“共感の共有装置”として機能。推し活がバズり、さらにファンが増える好循環が生まれました。

推し活の多様化:アイドル・キャラ・場所・概念推しまで

かつての推し活といえばアイドルやアニメキャラが主流でしたが、今はその枠を大きく超えています。

たとえば、

  • スポーツ選手やVTuber
  • ご当地キャラや鉄道車両
  • インフラ、企業理念、地元の老舗カフェ まで

“誰かに語りたくなる存在”なら、なんでも「推し」になる時代。つまり、飲食店そのものが“推される存在”になることも、十分にありえるのです。


次は、なぜZ世代がここまで推し活に熱狂するのか? その裏にある心理的メカニズムを深掘りします。


Z世代が推し活に熱狂する5つの心理メカニズム

共感と自己表現の欲求

Z世代は、「自分らしさ」をいかに伝えるかをとても大切にしています。

F&B Scene編集部が確認した調査でも、「推し活は自分の価値観や世界観を表現する手段」と捉えている声が多く見られました。

つまり推し活は、誰かを応援するだけでなく、“自分のことを知ってもらう行為”でもあるのです。

コミュニティ帰属意識と“沼”行動

Z世代の推し活には、「推しを通じて仲間とつながる」目的もあります。

同じグッズを持っていたり、同じイベントに参加したりすることで、「界隈(かいわい)」という仲間意識が生まれます。

この“推し沼”に一度ハマると、抜け出せなくなるほどの一体感が生まれ、飲食店でも「聖地」的ポジションを持てる可能性があります。

SNS可視化と承認欲求ドライブ

Z世代は「SNSで“いいね”がつくこと」が大きなモチベーションになっています。

「かわいいドリンクを載せたらバズった」「自分の席だけめちゃくちゃ映えてた」そんな体験が承認欲求を満たし、再訪動機にもなるのです。

推し活の場がSNSで共有されるほど、次の来店客を呼び込む広告として機能するわけです。

“体験シェア”を生むストーリーテリング

ファン心理をさらに強くするのが、「自分だけの物語」を持てることです。

たとえば、スタッフが推しに詳しかったり、来店時にサプライズ演出があったりするだけで、「ここはただの飲食店じゃない」と感じてもらえます。

そうした“語りたくなるストーリー”がUGCとして拡散されるのです。

マイクロインフルエンサー経済の台頭

Z世代の消費において、フォロワー1〜5万人の“マイクロインフルエンサー”が強い影響力を持っています。

大手よりも身近な存在として、「あの人が紹介してるなら行ってみよう」という信頼が生まれやすいのです。

店舗側が彼らに接点を持ち、自然な形でレビューや投稿を促すだけでも来店数は大きく変わってきます。


Z世代の“推し活熱”は、ただのブームではなく行動心理に根ざした継続消費。次のセクションでは、こうした熱量が飲食店のビジネスにどう影響を与えるのか、具体的に解説します。


飲食店が得られる4大メリット|推し活導入で向上するKPIと収益構造

客単価アップとLTV最大化

推し活を導入した店舗では、限定メニューやカラーを使ったドリンクが好評で、一般メニューより高価格でも売れやすい傾向があります。

実際、ある原宿のカフェでは、導入前と比べて客単価が約40%アップしたという結果も出ています。

“記念に頼む”という心理が働くことで、グッズやトッピングの追加注文も自然に増え、LTV(顧客生涯価値)を押し上げやすくなるのが特徴です。

UGC・口コミによる低コスト集客

推し活と相性が抜群なのがSNS。Z世代は“映え”を求めて来店し、写真や動画を自発的に投稿します。

なかでも「#推し活カフェ」などのタグが付いたUGCは、自然な口コミとして次の来店客を呼び込みます。

「SNSを見て来た」という来店理由は少なくなく、広告費をかけずに集客できる強力な武器になります。

イベント・グッズ販売での新収益源

“限定”や“先着”といったワードに弱いのも推し活ファンの特徴。

アクリルスタンドやフォトカードといったグッズの販売を加えることで、飲食売上にプラスして物販比率が全体の20〜30%を占めることもあります。

また、バースデーイベントやコラボキャンペーンを開催することで、通常の平日でも大きな集客を見込めるのもメリットです。

コミュニティ醸成が生むサブスクモデル

推し活ファンは、好きな空間に継続的に通う傾向があります。

これを活かして、月額制の「推し席確保パス」や「限定メニュー付きサブスク」を導入すれば、売上の安定化にもつながります。

ある都内カフェでは、月額1,980円でサブスク会員を募集したところ、600名以上の継続利用者が獲得できたという例も。

コミュニティを育てることは、飲食店にとって“ファンが支える安定収益”への第一歩なのです。


次章では、これらのメリットを確実に手にするために必要な7つの導入ステップを、具体例を交えて解説していきます。


実践ロードマップ|推し活を飲食店に取り入れる7ステップ

ターゲットペルソナの設定

まず考えるべきは、「誰の推し活をサポートしたいのか?」という点です。

年齢や性別だけでなく、SNSの使用状況や予算感、どんな“推し”に熱中しているかまでをイメージしましょう。

たとえば、「月に1〜2回、3,000円までなら推しに投資できる20代女性」など、具体的なペルソナを描くことでメニューや空間の設計がぶれにくくなります。

“推しテーマ”の選定とライセンス確認

誰を(何を)推すか?これは企画の成否を大きく左右します。

人気キャラクターやアーティストとコラボするには、正式なライセンス契約が必要です。

もし予算や手続きのハードルが高い場合は、地域の名物や店オリジナルのキャラを“推し”にする方法も有効です。

いずれにせよ、許可なく画像や名前を使うことはトラブルのもと。ここだけは慎重に対応しましょう。

メニュー・商品開発:難易度&コストタグ付きアイデア集

推し活に対応する商品設計には、“わかりやすさ”と“手軽さ”が求められます。

難易度目安コスト
★☆☆推しカラーのドリンク+30円程度でOK
★★☆キャラ風トッピングスイーツ+120円で世界観演出
★★★グッズ付きセットメニュー+250〜400円、在庫管理が必要

このように、スタッフ間で共有できるコスト感をタグ付けすることで、実装しやすくなります。

店内装飾・フォトスポット設計で世界観を強化

Z世代は「写真を撮るために来店する」と言っても過言ではありません。

ネオンサイン、背景パネル、テーブルクロスの色など、ちょっとした工夫で“推し空間”が完成します。

おすすめは、店内の一角を“推し専用席”として演出すること。非日常感を高め、SNS映えも狙えます。

SNSキャンペーンとUGC誘発テクニック

SNSでのシェアを促すには、「投稿すると何かもらえる」設計が効果的。

たとえば、ハッシュタグ付きの投稿でドリンク割引やノベルティをプレゼントするだけでも、拡散力が大きく変わります。

ポイントは、投稿のハードルを下げることと、お店側が必ずリアクションすること。それだけでファンのエンゲージメントが高まります。

イベント・コラボ企画の運営フロー

毎月の小イベント(例:推しの誕生日)、3ヶ月に1回の大型コラボといった“リズムある企画”がリピーターを生みます。

イベントの準備は、

  1. 許諾確認
  2. メニュー制作
  3. 告知
  4. 当日の運営フロー設計 と、4ステップに分解しておくと社内共有がスムーズです。

効果測定KPIと改善サイクル(ツール例も紹介)

施策の成果を“感覚”で終わらせず、数値でチェックすることが推し活ビジネスの鍵です。

指標
集客初来店数、リピート率
売上客単価、物販比率
SNS指定タグの投稿数、インプレッション数

GoogleアナリティクスやInstagramのインサイト、POSレジのデータを組み合わせて、週1〜月1でレビューする習慣をつけましょう。


これらの7ステップを踏めば、感覚頼りの“なんとなく推し企画”から脱却し、売上とファンを育てる“仕組み”が作れます。次章では、推し活導入時に見落としがちな法的リスクと運営注意点をチェックリスト形式で解説します。


法的・運営リスクをゼロにするチェックリスト14項目

著作権・商標・肖像権の確認ポイント

  1. 公式素材の使用には書面での許可が必須 画像や音楽、キャラ名などを使用する際は、メールや口頭だけでなく契約書の取得が基本です。
  2. 二次創作の商用利用は要注意 ファンアートやパロディも、営利目的では作者と原権利者の許諾が必要になるケースが多いです。
  3. 商標の事前チェックを習慣に J-PlatPatなどの検索ツールで、店舗名や企画名が既存の商標と被っていないか確認を。
  4. 似顔絵やシルエットも注意対象 有名人やキャラクターを連想させる表現でも、肖像権侵害とみなされるリスクがあります。

炎上・クレームを防ぐガイドライン

  1. 公式ガイドラインへの準拠を明記 「○○公式とのライセンス契約のもと実施」と店舗サイトなどに表記しておくと安心感が高まります。
  2. キャラ崩壊表現には慎重に “ギャグアレンジ”が裏目に出ると炎上の原因に。キャラクターのイメージを損なわない演出が基本です。
  3. SNS対応は24時間以内をルール化 投稿トラブルやクレームには初動がすべて。可能ならモニタリング体制を設けましょう。
  4. キャンペーンは景品表示法を守る プレゼント企画では、金額上限(取引価格の20倍 or 2万円)を超えないよう注意が必要です。

食品表示・アレルギー・衛生管理の基本

  1. メニュー名と実際の原材料に差異がないか “マンゴードリンク”なのに香料のみ使用では、誇大表示と見なされる恐れがあります。
  2. アレルゲン表記は統一ルールで 7品目+21推奨品目を、店頭POP・アプリ・ウェブサイトで一貫して表記しましょう。
  3. 色素・添加物の使用量にも配慮 派手な推しカラーを再現する場合、食品添加物の基準値を超えないよう分量管理を徹底。
  4. HACCP基準に準拠した衛生管理 特にイベント時の仕込み量増加に備え、温度管理の記録ツール(例:自動ログ温度計)があると安心です。
  5. グッズと食品の梱包は完全分離 アクスタや缶バッジを同梱する場合は、直接接触のない二重包装が推奨されます。
  6. 緊急時の対応フローを共有 異物混入・体調不良・クレーム発生時の連絡先と対応手順をスタッフ間で明文化しましょう。

推し活は感情を動かす力があるからこそ、法的・倫理的な配慮も欠かせません。次章では、これまでの要点をふまえ、すぐ使えるアクションアイデアをご紹介します。


まとめ|推し活でZ世代に愛される店になるためのNext Action

3分で振り返る記事ポイント

  • 市場の成長性:推し活市場は3兆円超、前年比12%の伸び。飲食店も恩恵を受けるポジションにいます。
  • 用語と進化の理解:「推し活」はアイドル文化のスラングから始まり、SNS時代に拡大。今や“誰かの推し”が誰かの行動を生み出す時代です。
  • Z世代の心理構造:共感・仲間意識・承認欲求・ストーリー性が熱量と消費行動を生む原動力。
  • 飲食店のメリット:①客単価UP ②SNS拡散 ③物販・イベント売上 ④サブスクモデルの構築という4大効果が見込めます。
  • 導入のための7ステップ:ターゲット設計からSNS運用・効果測定までを明文化すれば、再現性のある施策に。
  • リスク対策も抜かりなく:著作権、表示ルール、衛生対応などをチェックリスト形式で管理し、トラブルを未然に防ぎましょう。

今すぐ試せる“Quick Win”アイデア5選

  1. 推しカラーのドリンク追加 →原価+30円でできる、最も手軽な“映え対策”。
  2. ネオンサインや簡易背景でフォトスポット設置 →低コストで空間の“推し力”を底上げ。
  3. ハッシュタグ投稿特典の導入 →#店名_推し活投稿でドリンク割引など、自然な拡散を促進。
  4. 月イチの推しイベント(誕生日、記念日) →継続来店を生む“理由づけ”を演出。
  5. スタッフの“推し紹介カード”掲示 →お客様との会話が自然に生まれ、推しコミュニティ化が加速。