テイクアウトは、コロナ禍をきっかけに一気に広まり、

今では多くの飲食店にとって欠かせない販売チャネルとなりました。

一方で、実際に始めようとすると

「保健所の許可って必要なの?」

「衛生面はどう管理すればいい?」

「どうやってお客様を集めたらいい?」

といった疑問が次々と浮かんできます。

成功している店舗ほど、

法令遵守・安心感・集客導線の3つをしっかり押さえています。

本記事では、テイクアウトを始めたい・強化したい飲食店オーナーのために、

許可の取り方、集客のコツ、失敗を防ぐ注意点を、

最新データと実際の成功事例を交えてわかりやすく解説します。

なぜ今「テイクアウト戦略」が必要なのか

外食市場の変化と中食需要の拡大(最新データで解説)

いま、飲食業界のキーワードは「中食(なかしょく)」です。

外食でも内食でもない、“家で外食の味を楽しむ”という新しい食文化。

この市場は年々拡大を続け、矢野経済研究所の調査によると、2024年には約10兆円規模に達しています。

特に成長しているのが「惣菜・弁当・テイクアウトカフェ」。

忙しい共働き世帯や一人暮らし世帯の増加を背景に、

「手軽に」「でもちゃんとおいしい」食を求める声が高まっています。

加えて、テレワークの定着や物価高も追い風です。

外食を控える代わりに、

“ちょっと贅沢なテイクアウト”で気分を変える消費者が増えています。

つまり、テイクアウトは一時的な流行ではなく、

新しいライフスタイルに溶け込んだ「日常の食の形」へと進化しているのです。


売上安定化のための複数チャネル戦略

飲食店の経営において、いま最も重要なのが「複数チャネル化」。

店内飲食だけに頼ると、天候・曜日・イベントなどで売上が大きく変動します。

しかしテイクアウトを導入すれば、

客席数や営業時間に縛られず売上を積み上げることが可能になります。

さらに、デリバリーやEC販売と組み合わせれば、

固定費を分散し、収益をより安定させることができます。

最近では「平日はテイクアウト」「週末は店内で食事」というように、

お客様がシーンに合わせて店舗を使い分ける動きも増えています。

つまりテイクアウトは、店内売上を奪う存在ではなく、

“もうひとつの売上軸”をつくる経営戦略なのです。


小規模店舗でも始めやすい理由

「うちは個人店だから難しい」と思っていませんか?

実は、テイクアウトは小さな店舗ほど導入しやすい施策です。

理由はシンプル。

新しい設備投資がほとんど必要ないからです。

すでにある厨房で調理し、紙容器とラベルを用意すれば、

その日からスタートできます。

たとえば、東京・下北沢のカフェ「〇〇 Coffee」は、

ランチメニューをテイクアウト化したことで月間売上が30%アップ

“職場で食べたい”というニーズを取り込み、新たな顧客層を獲得しました。

また、テイクアウトをきっかけにInstagramでの認知も広がり、

「お店を知らなかった人が来店する」循環も生まれています。

このように、テイクアウトはチェーン店だけでなく、

地域密着型・個人店が強みを発揮できるチャンスなのです。


テイクアウトを始める前に必ず確認すべき「許可」と準備

保健所への届出は必要?飲食店営業許可との違い

「テイクアウトを始めたいけれど、そもそも許可が必要なの?」

これは、飲食店オーナーから最も多く寄せられる質問のひとつです。

結論から言うと、すでに「飲食店営業許可」を取得している場合、店内で調理した料理をそのまま販売するなら追加の許可は不要です。

ただし注意が必要なのは、販売形態によっては別の許可が求められるケースがあること。

たとえば――

  • 店舗外で販売(移動販売など)を行う場合
  • 調理後に冷蔵・冷凍して販売する場合
  • 菓子や弁当など、調理方法が異なる商品を扱う場合

このようなケースでは、「菓子製造業許可」や「弁当販売の許可」が必要になる場合があります。

一度、店舗所在地を管轄する保健所に相談するのが最も確実です。

都道府県・自治体によって判断基準が異なるため、

「うちは大丈夫だろう」で進めてしまうのは危険です。


追加許可が必要になるケース一覧

テイクアウトを安全に、そして合法的に運営するためには、

「どの業態で何の許可が必要か」を明確にしておくことが大切です。

以下は代表的なケースの一例です。

販売形態必要な許可補足
店内で調理し、すぐに販売飲食店営業許可既存許可でOK
菓子・スイーツを包装して販売菓子製造業許可焼き菓子・プリンなど
弁当をまとめて製造・配達仕出し屋(弁当製造)許可保管・配達ルールに注意
移動販売車・キッチンカー移動販売許可(営業車両)地域により条件差あり
冷凍・冷蔵品を販売食品製造業許可保存・温度管理が必須

特に移動販売や冷凍販売は、

自治体ごとに判断が異なります。

保健所では、図面や設備の確認、衛生面のチェックを行い、

許可証の交付までに1〜3週間かかるのが一般的です。


ラベル・表示のルールと容器選びの注意点

テイクアウト販売では、商品に貼るラベルや表示内容にもルールがあります。

「成分表示」「消費期限」「保存方法」などを正しく記載することが求められます。

特に、アレルギー表示の漏れは重大なトラブルにつながる可能性があります。

加工品を販売する場合は、原材料一覧や添加物も明記しましょう。

また、容器選びにも注意が必要です。

見た目の印象だけでなく、保温・通気性・コストのバランスを考えることがポイントです。

たとえば、汁物やソースを含む料理は「耐熱・耐油性容器」を、

サラダや冷製メニューは「通気性のある蓋付き容器」を選ぶことで、

品質を保ちながらお客様満足度を高められます。


許可申請〜営業開始までの流れ

新たに許可を取得する場合、

おおまかな流れは次のようになります。

  1. 管轄保健所に相談 自店の営業内容を説明し、必要な許可の種類を確認。
  2. 申請書類の提出 営業許可申請書・店舗図面・水質検査成績書などを提出。
  3. 施設・設備の現地確認 衛生管理体制や設備(シンク・冷蔵庫・床材など)を確認。
  4. 営業許可証の交付 問題がなければ、1〜3週間程度で交付。

許可を取得したら、

営業許可証を店内に掲示する義務があります。

また、営業内容を変更した場合や、

製造・販売を拡大する際は「変更届」や「再申請」が必要になるケースもあるため、

忘れずに確認しておきましょう。


売上を伸ばす「テイクアウト集客戦略」3ステップ

① Googleマップ(MEO)×口コミを最大化

SNS全盛の時代とはいえ、

実際に「近くでテイクアウトを探しているお客様」が最初に見るのはGoogleマップです。

たとえば「○○駅 テイクアウト」「カレー テイクアウト」などの検索で上位に表示されると、

そのまま来店や電話注文につながる可能性が高まります。

MEO対策の基本は次の3つ。

  1. 店舗情報(営業時間・住所・電話番号)を正確に記載する
  2. 写真を定期的に更新する(週1回が理想)
  3. 口コミに丁寧に返信する

特に口コミ返信は、信頼を築く重要な要素です。

良い評価には感謝を、指摘には誠実な対応を示すことで、

「このお店は対応が丁寧」と感じてもらえるブランド体験をつくれます。

口コミは、まだ来店したことのないお客様にとって“信頼のバロメーター”。

店舗全体で「レビューを育てる意識」を共有することが、長期的な集客力につながります。


② 店頭販促とPOPの工夫で“通行人”を顧客に変える

オンライン発信も大切ですが、

通行人が「思わず立ち止まる店頭づくり」も欠かせません。

人通りの多い立地では、1枚のPOPやメニュー表が来店を左右します。

たとえば次のような工夫が効果的です。

  • 写真付きメニューで、ひと目で内容と価格を伝える
  • 「数量限定」「本日限定」などの訴求ワードで購買意欲を刺激する
  • 容器や紙袋に店名ロゴを印刷し、“持ち歩く広告”として活用する

また、店頭POPにQRコードを掲載してSNSや予約ページへ誘導すれば、

その場で購入しなくても「次の機会」に繋げることができます。

デザイン性の高いパッケージや、写真映えする紙袋を採用するだけでも、

口コミ投稿や再訪率が自然と増えていきます。


③ リピーターを生む仕組みをつくる

テイクアウトは一度の販売で終わらせず、

“また買いたい”を生む仕組み化が成功の鍵です。

最も効果的なのは、LINE公式アカウントやスタンプカードを活用する方法。

購入ごとにポイントを付与したり、

「次回使えるクーポン」「週末限定メニューのお知らせ」などを配信すれば、

自然と再来店を促せます。

さらに、顧客データを分析して「どの時間帯に、どの商品が売れるか」を把握すれば、

在庫ロス削減や仕込み量の最適化にもつながります。

リピーター戦略は“売上の安定化”だけでなく、

お客様との関係を長く続けるための信頼構築の仕組みでもあります。


失敗しないための「注意点とリスク管理」

衛生・温度管理ミスによる食中毒リスク

テイクアウトで最も注意すべきリスクが、衛生管理の甘さによる食中毒です。

特に気温・湿度が高い季節は、

「調理から提供までの時間」「保存温度」「容器内の湿度」などが直接リスクに影響します。

厚生労働省のガイドラインでは、

調理後は2時間以内に提供・販売することが推奨されています。

また、提供時の食品温度は以下を目安にしましょう。

  • 温かい料理:60℃以上を保つ
  • 冷たい料理:10℃以下で保存

加えて、弁当などを作り置きする場合は、

「調理・盛り付け担当の手洗い」「調理器具の分離」「毎日の温度記録」など、

HACCP(ハサップ)に基づく衛生管理体制が不可欠です。

衛生事故は、たった一度でもお店の信用を大きく失います。

見た目や味以上に、“安全”を提供する意識を持つことが大切です。


パッケージ・容器による品質劣化を防ぐ方法

せっかくおいしく作った料理も、

容器選びを間違えると味や香りが損なわれてしまいます。

油分や水分が多い料理には、耐熱・耐油性の高い容器を。

サラダや冷製メニューには、通気性のある蓋付き容器を使うのが基本です。

容器を選ぶ際は、次の3点を意識しましょう。

  1. 保温・保冷性:料理の温度を保てるか
  2. 耐久性:持ち運び時に破損しないか
  3. コストバランス:容器単価が利益を圧迫しないか

最近では、環境に配慮したバイオマス素材容器も人気です。

エコ志向の高いお客様に好印象を与えられるだけでなく、

ブランドイメージの向上にもつながります。


オペレーション崩壊を防ぐ動線設計

テイクアウト導入初期に多いのが、

「店内オペレーションが混乱してしまう」という問題です。

イートインとテイクアウトを同じ動線で対応すると、

スタッフが混乱し、提供時間が延びたり、注文ミスが発生しやすくなります。

そこで重要なのが、動線の分離です。

  • 注文口と受け取り口を分ける
  • テイクアウト専用のレジ・カウンターを設置する
  • 店頭スタッフと調理スタッフの連携ルールを明確にする

また、注文導線をスムーズにするために、

「モバイルオーダー」や「事前決済システム」を導入するのも有効です。

忙しい時間帯ほど、オペレーションの整理が売上を左右します。

“混乱しない仕組み”を作ることが、リピートにつながる第一歩です。


価格設定と利益率のバランス

テイクアウトは「売上が伸びても利益が残らない」という悩みも多いもの。

その原因の多くは、原価率と容器コストを正しく計算していないことにあります。

一般的に、テイクアウト商品の理想的な原価率は25〜30%程度。

容器代・手数料・割引を含めて考えると、

粗利15〜25%を確保する設定が目安です。

価格設定を行う際は、以下の計算式を意識しましょう。

販売価格 = (食材原価 + 容器コスト + 諸経費) ÷ (1 − 目標利益率)

また、同一メニューでも「テイクアウト限定価格」を設定することで、

在庫調整や販売促進にもつながります。

利益率を守ることは、継続的な経営を支える“守りの戦略”です。


クレーム・返金対応のルール整備

どんなに丁寧に運営しても、

時には「商品が違った」「冷めていた」「スープがこぼれた」といったトラブルは発生します。

そんなときに慌てないために、

クレーム対応マニュアルを事前に整備しておきましょう。

たとえば以下のようなルールを明文化しておくと安心です。

  • 初回対応は店舗責任者が行う
  • 状況を確認し、必要に応じて返金・交換対応を行う
  • SNSや口コミに投稿された場合も、誠実かつ迅速に返信する

ポイントは、「事実確認」と「誠意ある対応」をセットで行うこと。

冷静な対応は、クレームを“信頼回復のチャンス”に変えることもあります。

トラブルを恐れるのではなく、

起きてもすぐ対応できる体制を整えることがプロの対応です。


テイクアウトから広がる新たな収益モデル

ゴーストキッチン・シェアキッチン活用

テイクアウトをきっかけに、

新たなビジネス形態へと広げる飲食店も増えています。

代表的なのが、ゴーストキッチンシェアキッチンの活用です。

ゴーストキッチンとは、客席を持たず調理と販売を専門に行う業態。

テイクアウトやデリバリーに特化することで、

家賃・人件費などの固定費を大幅に抑えられるのが特徴です。

たとえば、都内の飲食グループ「Kitchen Base」では、

複数ブランドが1つの施設内でテイクアウト専門メニューを展開。

月30万円前後の低コストで出店できるため、

既存店舗のサブブランド展開として人気を集めています。

一方、シェアキッチンは複数店舗で設備を共有する形態で、

初期費用を抑えながらテスト販売や新メニュー開発を行うのに最適です。

テイクアウト販売を通して、

新しいチャネルを試す“実験の場”として活用する店舗も増えています。


冷凍・EC販売などオンライン展開への応用

テイクアウトの延長線上にあるのが、冷凍食品・EC販売です。

近年では「店舗の味を自宅で再現できる冷凍商品」が人気を集め、

スープカレーや餃子、パスタソースなどのオンライン販売が急増しています。

冷凍技術の進化により、

“おいしさをそのまま閉じ込めて全国発送”できるようになった今、

テイクアウト=地域販売にとどまらず、全国展開の第一歩として活用できます。

たとえば、京都の人気カフェ「Cafe Style」は、

看板メニューのガトーショコラを冷凍スイーツとして販売し、

オンライン売上が全体の20%を占めるまでに成長しました。

このように、店舗で培った「味」や「ブランド」を、

テイクアウトからECへと広げる流れは今後ますます加速していくでしょう。


テイクアウト導入で成功している店舗の共通点

テイクアウトで成果を上げている店舗には、いくつかの共通点があります。

  1. 法令・衛生のルールを徹底している 安全・信頼を守ることがすべての基盤。
  2. SNS・口コミ・店頭をつなぐ“集客導線”を構築している オンラインとリアルを組み合わせ、継続的に顧客を増やしている。
  3. 商品体験を「ブランド価値」として届けている パッケージ、ストーリー、デザインなど、細部までこだわっている。

つまり、成功している店舗は「料理を売る」のではなく、

“体験を届ける”という意識で戦略を組み立てているのです。

テイクアウトは単なる販売手段ではなく、

店舗の世界観を外へ広げるための「新しい接点」。

そこから、EC・コラボ・イベントなどへ発展させることで、

売上もブランド力も長期的に成長していきます。


まとめ|テイクアウト成功の鍵は「安心 × 戦略 × 継続」

テイクアウトは、ただ「料理を持ち帰れるようにする」だけでは成功しません。

お客様に安心して選ばれる仕組みと、継続的に売れる戦略が必要です。

そのために欠かせないのが、次の3つの視点です。


1.法令遵守 × 衛生管理で“信頼”を得る

保健所の許可、衛生基準、温度管理——。

これらをしっかり守ることで、安心して利用できるお店として信頼を積み重ねられます。

食の安全は、どんな時代も変わらない“飲食店の基本”です。


2.SNS × 店頭 × MEOで“認知”を広げる

オンラインとオフラインを組み合わせて、

「見つけてもらう」「覚えてもらう」仕組みをつくりましょう。

Googleマップの口コミ、店頭POP、リピーター施策を連動させることで、

テイクアウトの売上は確実に伸びていきます。


3.リピーター戦略 × 品質維持で“利益”を積み上げる

利益率を意識しながら、

容器・価格・顧客体験のバランスを最適化することが重要です。

その上で、リピート購入を促す仕組みを整えれば、

テイクアウトは一時的な流行ではなく、安定収益を生む柱になります。


テイクアウトは、今後の飲食経営における“第二の主戦場”。

これから始める人も、すでに導入している人も、

まずは 「許可と衛生」→「集客導線」→「再来店施策」 の3ステップを整えることから始めましょう。

本記事を読み終えたら、まずは管轄保健所のウェブサイトで、

自店の営業許可内容をチェックしてみてください。

そこから、あなたの店舗の“新しい可能性”が広がります。